三修社の第二外国語教材「口が覚える」シリーズ

外国語教材って、どれも似たり寄ったりというところがありますよね。

私は本屋に行くたびに外国語教材コーナーに行くのですが、正直いつ見ても代わり映えしないな…と思ってしまいます。

教材の多くは初心者向けのもので、なかなか中級以上のものが見つかりません。

でも、私が最近買った「口が覚えるイタリア語」はけっこう硬派ないい教材でした。

口が覚えるイタリア語CD付
森口 いずみ
三修社
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これまで三修社というのはあまり注目していなかったのですが、「三修社 イタリア語」などで Amazon 検索したら、かなり高評価のものが多いですね。


この教材は 52課に分かれていて、それぞれテーマとなる文法事項(「補助動詞」「条件法現在」など)を持っています。

各課には、その文法事項を使った 10個の例文があります。


実際に使うのは、主に付属 CD のほうです。

CD の音声は、次の順番で流れます。

1. 日本語
2. ヒント(ない場合もある)
3. 無音
4. イタリア語

日本語とヒントを聞いて、無音時間のうちにイタリア語を言って、それが CD のイタリア語と一致することを確認する、というようになるのが目標です。


この教材には次のような長所があります。


1. 文法事項・人称変化の漏れをふさぐことができる。

イタリア語には、いろいろな細かい規則があります。たとえば親族名詞(父・兄弟など)には次のような規則があります。

(1) 所有形容詞とともに使われる場合には、一般に冠詞がつかない。
(2) ただし、名詞が複数の場合には冠詞をつける。
(3) 所有形容詞が loro (彼らの)の場合には、名詞が単数でも複数でも冠詞をつける。

これは文法書に書いてあるのですが、これを記憶するだけでは、実際に話すときにうまく使い分けられないということがあります。この教材では、それぞれの場合について例文があるので、口になじませることができます。

また、マンツーマンレッスンで会話練習をしていると「二人称複数」の活用がおろそかになりがちですが、この本ではそれぞれの時制について二人称複数の例文が含まれているため、それを補うことができます。


2. 基本的な表現を繰り返し練習することができる。

ここでいう基本的な表現とは、「(朝)起きる」「歯を磨く」「写真を撮る」「犬を飼う」といったものです。

以前の外国語学習記事では「Pimsleur」や「○○人が日本人によく聞く100の質問」といった教材を薦めましたが、これらはどちらからも漏れてしまうことがあります。Pimsleur はもっと基本的な「食べる」「飲む」「行く」「来る」等が中心で、100の質問シリーズは日本の社会や文化といったテーマが多いからです。


3. イタリア語のヒントがある。

これはけっこう重要なポイントです。

日本語を外国語に翻訳するとき、いろいろな言い方が考えられます。

たとえば 20課 4 の「あなたたちは好きなだけうちにいてかまわない。」という日本語を言われて、これだけでは stare や restare, rimanere などの多くの動詞が頭に浮かび、どれを使えばいいか迷ったあげく、何とかイタリア語にしたものの、模範解答で違うものが出てきてがっかりする、ということが起こりがちです。

しかし、イタリア語ヒントとして "fermarsi" が提示されるため、それをキーとしてイタリア語を作ることができ、そのようなことを減らすことができます。

また復習時にも、このヒントが思い出すきっかけになってくれます。


さて、実際の使用方法です。

私は次のように勉強しました。

1. ある 1課 の音声をそのまま流して、それぞれの例文について日本語とヒントを聞いてイタリア語を言おうとする(が、あまり言えない)。
2. 本のイタリア語を見ながらもう一度音声を流し、できるだけ記憶しようとする。
3. 例文ごとに日本語とヒントだけ再生し、そこで一時停止して、2 の記憶を頼りにイタリア語をタイプする。終わったらイタリア語を再生し、間違ったところを修正する。
4. リラックスして音声を聞き、各例文の日本語とヒントを聞いて、2 と 3 の記憶を頼りにイタリア語を言う。CD のイタリア語と一致することを確認する。これを二回繰り返す。

難易度にもよるのですが、1課につきだいたい 15〜20分ぐらいかかるかと思います。精神的に負担がかかるので、30分からその時間を引いた残りを休憩にあてるというのがいいでしょう。そうすると、1時間で 2課ということになります。

そして、家事や移動中などの頭を使わない時間に、数日前〜前日分の音声を聞き、日本語とヒントが聞こえた時点でイタリア語を頭の中で言います。

音声だけで完結しているため、空き時間を使って復習ができるというのもいいところです。


平日の毎日、1日 2課のペースで勉強すると、52課が終わるには 5週間程度になります。

私は 1日 4課のペースでやったので 3週間かからずに終わったのですが、イタリア語が前よりもスムーズに出てくるようになった気がします。


注意事項としては、「1から勉強するつもりで買ってはいけない」ということがあります。

1課だけ見ると、「あなたはイタリア人ですか?」のようなものがあるので油断してしまいそうですが、まったくの初学者がこれから入ると破滅します。

逆に、そこそこの中級者が復習のつもりで勉強しても、それなりに得るものがあると思います。


もう一度リンクを張っておきます。

口が覚えるイタリア語CD付
森口 いずみ
三修社
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ほかの外国語のものは自分で勉強していないので何とも言えないのですが、イタリア語版の完成度が高いところから見ると、やっつけで言語数をそろえたということはないかと思います。

レビューは全体的に高評価です。ブラポルは「高い」と星一つをつけている人がいますが、あまり気にすることはないと思います。

ただ、ドイツ語版のレビューには個性的だとの評価が多く、ちょっと癖のある出来になっているようです。


一応、全言語のリンクを張っておきます。

口が覚える中国語 スピーキング体得トレーニング (CD2枚付)

口が覚える韓国語 スピーキング体得トレーニング CD2枚付

口が覚えるフランス語 CD2枚付

口が覚えるスペイン語 CD付

口が覚えるドイツ語 スピーキング体得トレーニング CD付

口が覚えるロシア語 CD付

口が覚えるブラジルポルトガル語 CD付


追記: 「耳が喜ぶ」シリーズについても書きました。