「対策か、経済か」ではない

新型コロナウイルスについて。

「コロナ*1対策を取るか、それとも経済を取るか」という二項対立の図式をよく見るので、そうではない、という話。

わかっている人はこれ以上読む必要はない。


まず、コロナ対策としては、次の3つの選択肢がある。

1. 封じ込め
2. 緩和
3. 何もしない

2番目は、イギリスがやろうとして方向転換した。

www.bbc.com


イギリスでの試算では、「緩和」を選ぶと、25万人が死ぬという。

もちろん、医療システムは完全に崩壊する。

集団としての人間は、その状態に耐えられない。

あなた個人がいくら冷血で「いくら人が死んでも気にすることはない」と思っていたとしても、いざ死体の山ができて火葬が追いつかないような状態になってみると、あなた以外の多くの人間が「これではだめだ」と思うようになり、結局は「封じ込め」に方針転換せざるを得なくなる。

イタリアもそうなっている。

日本も、そういう状況になったら、確実にそうすることになる。


よって、対策の実際の選択肢は次の3つだ。

  1. 封じ込め
  2. 緩和→死体の山→封じ込め
  3. 何もしない→死体の山→封じ込め

当然、最善は1番目だ。


で、「封じ込め」の方法の話。

これはとにかく、「一人の感染者が平均的に感染させる人数(基本再生産数)」が1未満になるまで、対策を厳しくしていく必要がある。

基本再生産数が1を上回っている間は、指数的に感染者が増え続ける。

(集団免疫ができればその限りではないが、それは「死体の山」コースなので選択肢に入らない)


ここで、「基本再生産数が1未満になるまで対策をすると経済がめちゃくちゃになる」とする。

この場合、それを避けて対策を厳しくするのをためらうと、指数的に感染者が増えて死体の山ができてから対策を厳しくすることになり、結局は経済がめちゃくちゃになる。


つまり、基本再生産数が1を上回っている場合、経済に関しての実際の選択肢は次の2つ。

  1. 感染者が少ないうちに厳しい対策を取り、経済がめちゃくちゃになる
  2. 感染者が増えて死体の山ができてから厳しい対策を取り、経済がめちゃくちゃになる

これも当然、最善は1番だ。


まとめると、我々には「小さい被害+めちゃくちゃになった経済」か、「死体の山+めちゃくちゃになった経済」という選択肢しかない、ということになる。

これは新型コロナウイルスの性質上しょうがない。

世界はもう「新型コロナウイルス後の世界」になってしまっている。

その事実から目をそらそうとしても、「新型コロナウイルス以前の世界」に戻ることはできない。


もちろん、現時点での対策で基本再生産数が1未満になっているなら、いま以上に厳しくすることはない。

そのままコロナの収束を待つだけだ。


幸いなことに、3月9日の専門家会議によると、「実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移してい」たそうだ。

forbesjapan.com


今後はどうなるだろうか?

*1:慣習に従って「新型コロナウイルス」のことを適宜「コロナ」と呼ぶ。