最近、ネットでものが言いにくい雰囲気があるとのこと。
「なんで辞めたの?」とか「次どこ行くの?」など、昨今のインターネットは若干書きにくい空気
個人的には、ぶっちゃけた退職エントリを書いたこともあるので、そういう風潮を憂慮している。
そういうわけで、「正直に思ったことを書いて、いい結果になった」という話を書いてみたい。
(といっても、上記エントリの話ではない)
前職を辞めて、半年ちょっとプラプラして、さて仕事を探すかーとなったとき。
まあプログラマというのは就活力の低い人間のクズが多いと思うけど、ぼくはその中でもかなり重症のほうなので、いろいろ苦戦していた。
まず、会社の数をこなせない。
それまでの就職でも、受けた会社の数はごくわずか。
就職経験は 2回なのに、就活したのは合計 4〜5社だけ。
今回の就職活動では、昔勤めていた大阪の K社というところが「よかったらうちに帰ってこないか」と声をかけてくれていた。
なんと、前職と同じぐらいの待遇をしてくれるという。
しかし、この K社というのは創立 30年ぐらいの小さな会社なのだが、創業社長が亡くなってからは社内の空気も沈滞気味で、技術レベルも低く、将来性があるようには思えなかったので、できれば帰ることは避けたかった。
それで、転職サイトと知り合いのすすめでそれぞれ 1社、合計 2社受けてみたのだが、両方ダメだった。
1社は態度が社会人としてアレだったということで、もう 1社は試験内容が Java のギョーム系のことばかりだったので(当時 Java経験なし)落ちてしまった。
凹んだ。
元々行きたかったのは IME の会社だが、諸事情によりそれもダメだった(受ける前の段階で)。
それで、気が進まないまま、K社に戻ることに決めた。
そのときに、上述のこと(社内の空気が沈滞気味・技術レベル低い・将来性がなさそう)のために帰りたくないが、帰る以上は頑張ろうというブログ記事を書いた*1。
最初の出勤日まであと数日というときになって、以前の上司から連絡があった。
ブログ記事の内容がよくないので、消してくれないかと。
ぼくとしては、納得できる理由があるなら消すなり編集するなりしてもよかったが、そういう理由も聞けなかったのでそのままにしていた。
そして、入社日の 2〜3日前。
K社から「内定取り消し」というメールが来た。
なにやら「情報セキュリティ委員会」とやら言うところが問題視したとか。
まあ 30人ぐらいの会社だし、なんとか委員会といっても数人の寄り合いみたいなものだけど、要は「気にくわなかった」のだろう。
それで就職活動を再開して、2社受けて(やはり数がこなせない)そのうちの 1社に受かって今に至る。
この一件で反省しているかというと、まったく反省していない。
それどころか、「正直に思ったことを書いたおかげでリスクが回避できてよかった」と思っている。
というのは、K社が「非合理なプレイヤー」であるということが明らかになったからだ。
もともと好待遇で帰ってきてほしいということなら、ぼくの語学力や技術力を使って金を稼げるという予想があったはず(当たり前だ、慈善事業じゃないんだからぼくに金をくれたくてそんなことを言ったというわけはない)。
それを、中の人の気を悪くするようなことを書いたからといって雇うのをやめるというのは、明らかに非合理的だ。
労働契約を「労働と金銭の交換契約」ではなく、「雇用主から被雇用者への施し」のように勘違いしているのだろう。
バカにはよくあることだ。
もちろん、そういう主体と関わるということは、いくら金をもらったとしても、いつ人事権を持つバカの機嫌を損ねて非合理的な報復行動に出られるかわからないということになる。
そういうのはぼくの人生にとって大きなリスクなので、避けられたというのは非常にいいことだ。
いま働いているところは、普通にコーディングや英語などのテストと面接を受けて通った、比較的新しい会社。
面接の過程でも対等な立場でぶっちゃけた話ができて、合理的な思考をしていることが伝わってきた。
おかげで、今では誰かの機嫌を損ねる心配などせずに思ったことを思った通りに書ける。
たまに転職活動をしたりして、それについて公開設定の日記に書いたりもしているけれど、その成否と関係なく真面目に仕事はしているし、会社としては問題視するところではないだろう。
ぼくにとって、働くにあたって重要なポイントというのは順番に次のようなものだ。
1. 人間としての尊厳
2. 働くうえでのプライド
3. 労働条件
4. 労働環境
1 の人間としての尊厳というのは、給料の支払いを「施し」のように思っている奴隷主のような雇用者の下で働かないということ。
2 の働くうえでのプライドというのは、自分の主義や信条に反しない仕事をするということ。たとえばぼくにとっては日本語というのは大切なものなので(つい最近も記事を書いた)、日本語破壊機を作る仕事(例です)のようなものは、どんな待遇だろうとできない。
3 の労働条件というのは、夜遅くまで働かされたり休日出勤させられたりしないということ。当たり前のようだけど。ちなみにぼくの今の職場では、6時になったその瞬間に帰ることができる(ぼくの場合。ほかの人は5〜10分後に帰ることが多いが、まあ誤差の範囲だ)。給料も高いに越したことはないが、生活できるという最低ラインをクリアしていればいい。
4 の労働環境というのは、開発環境や人間関係やその他もろもろ。まあ大事といえば大事だけど、上記 3条件に比べたら重要ではない。空気がピリピリしていて気が休まらないとか、リスクテイクができなくて古い環境を使い続けているとか、バージョン管理システムが活用できてなくてコードレビューのためにファイルを zip ファイルに固めて送らないといけないとか、そういうことはあったとしても些細なことだ。(2014/04/06追記: のちに、このようなことはより深い病理に根ざしているため軽視できないという洞察が得られた)
今のぼくの職場では、上の三条件が整っている。
まあ生活はしんどいし、いま住んでいるところの家賃が払っていけないから引っ越ししないといけないし、全体的につらくて死にたいし人生の敗残者という趣があるけど、まあそれが実力相応といったところなんだろう。
そういうわけで、「書きたいことを書いたらいいことがある」という話でした。
書きたいことを書いたおかげで、ろくでもない会社をそうであると判別できて、行くことを回避できたということ。
正直に思ったことを書くような人間を煙たがるようなところというのは、まあろくな場所じゃない。
仕事がしんどくて生活が厳しくて自殺したとしても、誰かの施しをもらったわけじゃないし、自分の主義に反する仕事に手を染めたわけでもないし、そういうのに比べたらマシだと思っている。
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無職でブラブラしている間に翻訳した、カフカの「変身」。
これまでほとんど売れず(人生は厳しい)、最低振り込み金額にも達しないので一文の得にもなっていない(達しても大赤字だ)けれど、費用対効果を度外視して好きな作品を訳したので、おすすめできる品質にはなっていると思う。
よかったら買ってください。
*1:最終的には消した。