iOSの謎の単語と、それにまつわるデマ
(2018/01/15 追記) いつの間にか削除されていたようです。iOS 11.2.2で候補から消えていることを確認しました。
iOSで「レイプ」と入力しようとすると、変な候補が出てきます。
レイプアールサァン?
いったいこれは何でしょうか。
「レイプアールサァン」でGoogle検索をすると、知恵袋が見つかり、その中で次のような回答がされています。
一つの可能性としては、変換辞書の盗用防止があります。
…
もし「レイプアールサァン」が変換できたら、それはiOSの辞書の盗用だということになります。
なるほど、それっぽいですね…。
それが完全なデマだということを除けばね!
では、この「レイプアールサァン」とは何なのか?
キーとなる人物は、ツイッターの「たいぷあーる」(@HONDA_TYPER)氏です。
今でもバリバリ活動している人なので、こうやって取り上げるのは気が進まないのですが、デマがとめどなく繁殖してしまうのを見かねたので記事にしました。
まず、このたいぷあーる氏ですが、友人には「タイプアールサァン」と呼ばれていました。
起きろRT @belasira: タイプアールサァンはイケボ
— たいぷあーる (@HONDA_TYPER) 2011年3月19日
名前から考えて不思議ではありませんね。
で、この人は「レイプアールサァン」とも呼ばれています*1。
意味が分からないです^q^RT @W_Ryonano: レイプアールサァンは君が代でも打てるんでしょ?
— たいぷあーる (@HONDA_TYPER) 2011年3月1日
レイプにまつわる何かの内輪ネタがあったんでしょう*2。
これらのツイートは2011年のもので、時期的に、iOSの辞書の話題が出るよりはるかに先のことです。
また、元の名前という文脈もあるので、こちらが先であることは確実でしょう。
それにしても、こんなあだ名がなぜiOSの辞書に拾われたのでしょうか。
次のツイートがヒントになるかと思います。
I'm at レイプアールサァン (日本, 佐賀市) http://4sq.com/q8PHZa
— たいぷあーる (@HONDA_TYPER) 2011年7月10日
これ、Foursquareですよね。
悪ノリして、自分の住所を「レイプアールサァン」として登録したんだと思います。
これは、iOSの辞書を作る際にクローラが拾ってしまっても無理はないですね。
もちろん、いろいろフィルタリングに力を入れているとは思いますが、数百万もある辞書エントリのうちのひとつなので、チェックが漏れてしまったんだと思います。
ちなみに、本人の反応はこちらです。
予測変換にレイプアールサァンって何事
— たいぷあーる (@HONDA_TYPER) 2016年12月29日
さて、この記事を書くに至った経緯ですが。
「眞踏珈琲店公式」という、フォロワー2万超えの有名アカウントが次のようなツイートをしたことによります。
(ちなみにiOSで「れいぷ」を変換しようとすると「レイプアールサァン」と変換されるのですがこの言葉はいったいなんでしょうか)
— 眞踏珈琲店公式 (@mafumicoffee) 2017年10月9日
この「レイプアールサァン」、「レイプ」が性的な用語ということで下に追いやられて、結果として上のほうに出てくることが多いんですよね。
このアカウントも、検索の結果、上記の知恵袋にたどり着いていました。
(Yahoo!知恵袋によれば「レイプアールサァン」は意味のない言葉で、iOSの辞書をまるまる盗用されることを防ぐために、他の辞書ではありえないような変換を一部取り入れているとのこと。昔の例でいえば、「ぎれ」を変換すると「ピカチュウ」になったなど。真実かどうかは判りませんが)
— 眞踏珈琲店公式 (@mafumicoffee) 2017年10月9日
もちろん、これはデマです。
それで、私が調べたことを簡単に伝えました。
探したら、昔ツイートしたものがありました。 https://t.co/ipMjYXedxS
— Hiroshi Manabe@79.0㎏ (@takeda25) 2017年10月9日
すると、次のような反応でした。
(という説も確認されておりました。iOSの辞書登録よりも前に存在していた単語だとするとこの説がグッと真実味を帯びてきますね)
— 眞踏珈琲店公式 (@mafumicoffee) 2017年10月9日
「という説」というところが気になりました。
こちらには鉄壁の証拠があるのに、諸説のひとつ扱いになってしまう。
iOSの日本語入力辞書の1エントリの問題とはいえ、デマが堂々と通用している現状に歯がゆさを覚えたので、こうして記事として記録に残しておくことにしたというわけです。
デマと言っても、該当知恵袋を書いた人は「一つの可能性」と明言しています。
それが引用されるうちに「説」としての信用性を獲得していく…。
多くのデマは、こういう過程を経て広がっていくんでしょうね。